赤ちゃんがすくすくと育っている安堵感と、親に対する憤りが交錯します。
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1年前の早朝。都心のごみ集積場に生まれたばかりの女の赤ちゃんが捨てられていた。口を固く縛った袋の中に入れられ、ごみ同然の扱いだった。たまたま通りかかった男性が、か細い泣き声に気付かなければ、収集車で運ばれていたかもしれない。一命を取りとめた乳児は、生まれた5月にちなんだ名前をもらい、今、乳児院ですくすく育っている。
昨年5月22日午前7時過ぎ、男性が東京都豊島区北大塚のマンションのごみ集積場近くを通りかかった。かすかに聞こえる泣き声。半透明のごみ袋をほどくと、へその緒がついた裸の赤ちゃんにバスマットがかけられ、ステンレス製のたらいの上に置かれていた。
乳児は生後5~7日の女の子。体重は約2000グラム。体温は33度しかなく、低体温症と診断された。その日はごみの収集日で、発見が遅ければ生命の危険があった。警察に通報した男性は「自分は子供はいないが、捨てるなんて許せない」と憤った。
赤ちゃんには、戸籍法に基づき、豊島区長が“名付け親”となり、戸籍が作成された。「5月というさわやかな季節にちなんだ名前」(同区)だという。誕生日も病院と警察の意見を参考に決められた。
現在は都内に10ある乳児院のうちの1つで生活。発見時2000グラムだった体重は、1歳女児の平均的体重の約10キログラムまで増えた。最近は、壁に手をつき、立つことができるようになった。心配された低体温症による障害もなく、元気に暮らしているという。
赤ちゃんが発見されたころ、熊本市の慈恵病院で運用が開始された赤ちゃんポストが話題となっていた。子供を安易に捨てる風潮の広がりを心配する声も出ていたなかでの事件だったが、帝塚山大の才村真理教授(児童福祉)は「親は赤ちゃんが死ぬ可能性が分かってごみ集積場に捨てた。極めて悪質だ」と指摘する。警視庁は保護責任者遺棄容疑で捜査を続けている。
都は事件を機に、捨てられた赤ちゃんの統計を取り始めた。昨年度は都内で9人が保護されたといい、無責任な親は後を絶たない。赤ちゃんたちは、親が見つからないと、乳児院で原則2年間育てられ、その後は里親に引き取られるか、児童養護施設で原則18歳まで過ごすことになる。
乳児院関係者らは「女の子は乳児院で愛情を注がれて成長しているが、子供にとっては親が一番。是非名乗り出て、罪を償った後、一緒に暮らす道を選んでほしい」と呼びかけている。
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